名優が家康を演じたら
これは2週連続で文春砲を食らった俳優さんに送るエールです。
2000年の大河ドラマ『葵つかさ』じゃなかった『葵徳川三代』で、
家康を演じたのは津川雅彦さんでした。
Wikipediaにも載っている有名な逸話ですが、家康の癖と言われている爪を噛む仕草を、その噛んだ爪を近習の懐紙に吐き出す演技で視聴者にインパクトを与えました。
今風の爪切りはありませんから、爪を短くするのは、噛みちぎるのが最も手軽で、安全でもあったのです。他には小刀で削ぎ落とすとか、鮫皮みたいなヤスリ系とか、爪を切る道具ひとつにも歴史はあるんです。
食事中に不快だと一部から苦情が寄せられましたが、大物俳優はこう反論します。
行儀云々をいう前に、テレビを見ながら食事するのをやめたらどうだ!
その通りでございます!(ひれふ)
家康様の演技をするってのは、これくらいの覚悟でやらなくちゃいけません。
そして、この家康は後に松村邦洋のモノマネを経て、今でも語り継がれる名演となりました。
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三方ヶ原で負けたら、クソ垂れて逃げ帰り、後の教訓にすべく貧相な肖像画を描かせ、秀吉に関八州をもらったら、仲良く立ち小便してもらって構わないんですよ。それこそが家康なんですから。
嫌われなされ!
水戸黄門みたいな全国ツアー開始!
というわけで、天下取りは終わってしまったので、これから約3か月1クールをかけて、神君に逆らうふらちものを退治する全国ツアーを放送します。
水戸黄門かよ!
その祖父だけどな!
父親の前田利家に勝てなかったので、息子の利長に謀反の疑いかけて加賀遠征。屈服させて母のおまつ様(芳春院)を江戸に送らせる。
【2002年利家とまつ】
目障りな上杉景勝にも因縁つけたら、家老の直江兼続に抗議文を書かれ、内容があまりにも核心ついてたので、頭に来て、豊臣恩顧の大名を引き連れて、会津に遠征。
【2009年 天地人】
途中で三成の挙兵を知るや、小山評定で諸将の忠誠心を競わせて「お城を差し上げます」なんて一言で土佐一国を手に入れた山内一豊も、大河ドラマの主人公になれましたとさ。
【2006年 功名が辻】
関ヶ原の前だけでも、もう過去の大河ドラマの主人公3人以上の人生を変える重大局面なんですけど、このファスト大河は、そんな小物たちをどうしてくれるのかしら?
Show must go on だよ
10月2日のジャニーズ記者会見があまりにも完璧な出来栄えだったので、司会の元NHKアナと絡めて、褒め殺しの文章を書いていたら、ちゃぶ台返しが!
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ポイントは‥
ジャニーズの名前をなくす。
運営は新しい会社。
11月から被害者に補償。
CCOに弁護士を入れて法令遵守。
岡田准一のように独立オーケー。
ジュリーは病気なので欠席。
そのメッセージ代読は、評判のいいイノッチ。
新会社の副社長就任おめでとうございます。
紛糾する場を鎮める名演説に、相手方の記者団から盛大な拍手。予定通り2時間で終了。
完璧じゃないですか!
こりゃ早々に大手企業と取引再開ですね。
と思いきや‥N G出しちゃいました。
さあ、次行ってみよう!
夫婦を為すのも女の戦
一方で、そんなことが許されず辛苦を舐めるそれ以下の人間は、上に対してはコピペつらい、下に見る奴に強く出るのは処世術ではありますが、見る人は見ています。もちろんお天道様も。
昼間っから女といちゃついて、お天道様どころか渡辺盛綱に見られちゃって、バラされたら、腹を切る覚悟くらいするよね鳥居元忠サンも。
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武田方の忍びとして活躍した千代が、鳥居元忠の妻になるというご都合主義的な展開はどうなのよ?とは思います。
しかし、この時代の常として、男は簡単に死んでしまいますから、夫に先立たれた未亡人は、必然的に増える。
家康側室の淤愛様も、秀吉生母の大政所様も、夫に先立たれて再婚です。
「どうしたらいいんですか?女は!」
それが今回の最重要テーマだった様に思いました。最後にぶっ飛ばされてしまいましたけどね。
女一人ではトラクターで畑を耕すことも出来ず、権利を守ってもらえないこの時代でやれる職業は限られていますから、誰かの妻になるのは生きるための手段であった。
一方で重婚は禁止されてませんので、男は器量次第で複数の妻を持てる。
もちろん、それ故に、妻の方も主人に捨てられないために、結婚した後も競争があり、三食昼寝付きの専業主婦にはなれない。よっぽどの容姿とかソの手がなければ。
レンジでチンすれば食い物にありつけないこの時代に火事全般を担わせる家政婦は不可欠でした。
そして病気や戦で軽々しく死んでしまう子供を増やし、子孫繁栄をはかることは、自分の命より大事にしていました。
そもそも女が子供を産まなければ、人は絶対に増えない。仕込んだだけじゃダメなんですよ。
しかし出産そのものが、母体の生死に関わる危険性も、現代とは比べようもないほど大きかった時代です。
自分も他人もあっさり死んでしまうこの時代ならなおのこと、人を増やすのは産んで増やすのが第一。
ついで、敵ではなく味方を増やし、その味方の子供を増やし、また、減らさない様にしてゆくしかない。
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武田の工作員として徳川家の敵だった女(千代)に対して、家康夫妻から名言が出ました。
「幸せになるのは生き残った者の務めである。」(家康)
「人が生きるつらく苦しい茨の道の中で、したい慕われる者のあることが、どんなに幸せであることか。それを得たのなら、大事に」(淤愛)
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豊臣家は、少ない身内が死んでゆき、殺されていきます。恩を施した味方も減っていきます。この大河ではそもそも黒田官兵衛もいないのに!(しつこい)
徳川家は、身内も味方も増やして、戦をせずに、いつの間にかパワーバランスを逆転させていきます。あれ?その中には官兵衛の息子の長政が!
ぶっ飛ばす女
当たり前のことですが、現代と戦国時代は価値観が違いますから、いまの庶民の目線で当時の選ばれた貴種様の思想や行動を評するなんて僭越なことです。
死生観が違いますから、人間の生死が現代では考えられないレベルで軽視され、それこそ手柄を捏造するために無関係な他人のクビを切って持ち帰るとか、逆に宗教や主君のために、自分の命も軽々しく捨てることができた時代でありました。
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そんな中で生まれた戦国の最後のあだ花が茶々様だとしたら、高価な鉄砲をおもちゃにして、他人に向けるのもちゅうちょせず、しかも甘やかされているから誰もそれを止められないなんて、物騒な姫君になっても、不思議じゃないくらいのインパクトありました!イイヨイイヨー。
史実なんてどうでもいいくらいのぶっ飛びかたでしたけど、それならそれでVIVANTみたいに急所を外して人間に当てるくらいの演出がないと、ワタシゃ驚きませんよ。現代の人間なんで。
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現代にも通じるのは、独裁者とその家族が、取り巻きに守られると、規律も約束も守らない傍若無人な振る舞いができるってことでしょうね。別の字を使うキタガワさんの話はまた別の機会に。
女たちの戦国
ラストの茶々様に完全に持ってかれてしまいましたが、この回「於愛日記」は他の三人の女性のイカサマ(じゃなくて生きザマ)を見せる話でした。
徳川家後継となる秀忠の母の於愛様(広瀬アリスさん)の最終回であり、
これまた独自設定の、元武田の忍びの千代(古川琴音さん)が、鳥居元忠の妻となる再登場回であり、
本多忠勝の娘の否姫(じゃなくて稲姫(鳴海唯さん))が、真田家への輿入れを決意する、
女ばかり出てきて、戦もないので、男性にはつまらなかったかもしれませんが、歴女的には、史実とかまったく無視して面白く見れました。あっそうそう、忠勝と元忠の乱闘もよかったでぇす。
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「どうする家康」で軽視できないのは、女性の物語的な取り扱いとか、彼女らの演技が思いの他に良いことです。
北川景子や広瀬アリスや有村架純はやって当たり前のスター女優ですが、中堅や若手の女優さんに、とてもスパイシーな存在感を感じます。もちろんそういう脚本と演出があるから、見てる方にもそう見えるわけですけど。
このジャニーズ逆風の中で表に出てきませんけど、座長の松本潤の存在が、女優陣のモチベーションを高めているんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうね。
女優さんもプロなので「憧れの松潤と共演できてマンモス嬉ピー!」なんて本音があったとしても、インタビューで答えることもないでしょう。
しかし彼女たちの少なくない人数が嵐のファン世代だけに、おばさんとしては「さっさと白状なさい」と思ったりします。
前作の「鎌倉殿」主演の小栗旬が、座長として現場の雰囲気づくりに奮闘していた様子は「プロフェッショナル仕事の流儀」で映像になってましたけど、
今回は松潤がアレなので、彼と共演したい!同じ現場の空気吸える!あの目線が私を見てる!彼に恥をかかせないようがんばるぞ!的な共演者のプラスアルファが発揮されるとしたら、あながちジャニーズ主演てのも悪くないかもな‥と見直すところがあります。
PS
そんな私でも岡田准一主演の「軍師官兵衛」を楽しみにしていた時代があったんですよ
‥ってそんな白状はどうでもよろしい。