『シン・お持ち帰り伝説』

吐き気がしたので、起きてトイレで吐きました。

 

さすが自分の家なので、電気なしでも手さぐりで動けます。

 

口をすすぐために洗面台に向かいました。

 

鏡で自分の顔を見るのが怖かったので、下を向いたまま、洗顔まで済ませました。

 

頭を冷やして、

今の状況を整理しました。

 

 

ここは自分の家

腕時計はしてる

今は土曜日の11時過ぎ

服は昨日のまま

つまり、

 

何もされてない。

よかった。

 

 

バックを探した。

ベッドの上にあった。

財布も入っていた。

中のお札もあった。

 

つまり、

タクシー代も払ってない。

なのに、家にいた。

 

携帯が見つからないので、家の電話からかけたら鳴りました。あった。

 

携帯を手にして、女友達からのショートメールが目に入りました。

 

「ラーメンおいしかった?」

 

それでようやく昨日の晩のことを、断片的に思い出しました。

 

職場の飲み会でした。事前払いの会費制。

二次会のカラオケスナックは上司もち。

そしてラーメン屋まで行ったところまで思い出して、思考停止しました。

 

男と二人で行った!

そのことを友達にも知られていた!

 

だけどその先が思い出せない!

というより

思い出したくない!

 

ラーメン屋の支払いは男?

タクシー代も男?

で、家にいるのはなんで?住所知ってるのはなんで?

 

服は着てる。

自宅のベッドで寝てた。

男に担ぎ込まれた?

 

不安のまま玄関に行ってみました。

私の靴は揃えてありました。変だな。

防犯用ダミーの男靴を見てギョッとした。でも私一人だ!

 

そして白いポリ袋を見つけました。

中にはバック入りの持ち帰り餃子が入っていました。しかも2つ?

 

まだいろんな謎が、酔った頭の中を渦巻いていました。

 

たぶん男に電話すればわかるはず。

 

だけど、なんて言えばいいのかわからないので、かけられませんでした。

 

「昨日はすみませんでした。

有難う御座いました。」

 

と、漢字多めでカジュアルに見えないようなメールを送った後に、もしも返事が来たらどうしようとか悩みました。

 

まるで中学生?これって恋?とか思ったら、また思考停止しました。

 

 

外に出る気力もなく、他に食べ物がないので、仕方なく、餃子を温めて食べてみました。

さとうのごはんはこういう時に便利です。宣伝か!

 

しょっぱい味がしたけど、酒呑みにはちょうどいい味付けなんだろうな。店で食うもので、持ち帰りするほどでもないな。

と自分を納得させながら、片付けました。

 

さようなら。昨日の私。

 

(完)

 

 

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笑えねー!

却下!

 

と、これは後日の反省会という名の飲み会で、自供させられた内容です。

私のことなんだから、私が語ることが真実です。なのに。。。

 

敗者の真実は闇の中に葬られ、歴史は勝者によって書き換えられたのでした。